ORIGIN AND SURFACE RYUTA SUZUKI SOLO EXHIBITION
2014/12/06 – 2015/01/03 at Ying Gallery
私の作品は版画の作品が主な表現手段です。基本は木版画です。伝統的な浮世絵版画のように、木を彫刻刀で彫り、水彩顔料で着彩をし、馬連で摺りあげます。その基本的な木版画に加え、版表現に関する様々な要素を取り入れ、自分なりの工夫を加えた技法も使用しています。さらには作品が完成すると本来はゴミになってしまう版木も絵画作品として再生させ、展示をしています。
版画を取り扱うアーティストは版画技法をとても重要視しています。なぜなら、版種が異なれば、表現される作品の表情が大きく変わるからです。私もインクの種類、紙、摺り方など、色々な要素を組み替えることで表現が変わる版画に面白みを感じます。新たな工夫で摺りあげられた版画は新しい色味やテクスチャーを生み出すので、技法を開発することが、絵作りそのものになるのが版画というメディアなのでしょう。
技法の開発とともにいつも考えることがあります。それは「なぜ版画で表現しなければならないのか」という問題です。この問題は版画の理論の一番コアな問いでしょう。私なりの答えは「鉛筆や筆では出すことのできない表情を作ることができるから」です。ですから、私が新しい技法に挑戦するときは“手で描く”手法ではできない表情を出すための技法になるよう工夫します。
私がロンドンで修士課程に在籍する学生だったときに「Exploring the possibility or impossibility that technique/skill can become more than just a medium for expression in printmaking.」というタイトルの短論文を執筆しました。これは、技法開発が絵作り以上の意味を持ち得るかという趣旨のものです。私がこの論文で論じたかったことは、版表現の分野では技法(技法開発)が、表現上のコンセプトに大きく影響を与える、もしくは、技法=コンセプトという次元が存在するのではないかというものです。この考え方は、木版リトグラフという技法を開発した、小作青史氏の考え方の影響を受けています。表現したいイメージを具現化する方法が”技法”と呼ばれるものだということは芸術の根源的な了解であるものの、現代美術の中であらゆる種類の表現手段やイズムが脱構築される中にあって、この考えが私の版画にはいささか当てはまらないところもあるのではないかという思いがありました。しかし、ロンドン留学中にはこの疑問の答えとなるはっきりとした成果は挙げられませんでした。でも、活動場所をロンドンから北京に移しても、この問題は私の頭の中から消えることはありませんでした。
活動場所を北京に移した理由は様々ですが、今思い返せばミステリアスな中国を知ってみたくなったという気持ちが根底にあったのだと思います。さて、その未知な中国では、手に入れられる画材の種類も異なり、一旦材料から表現を見直さなければなりませんでした。そしてロンドンでは不完全燃焼だった、表現への取り組みにも意欲が湧いていました。そんな中で作りはじめたのが、使用後の版木に色鉛筆やアクリル絵の具で加筆していく”版木ペインティング”です。ロンドン時代に一度、版木のみをインスタレーションして展示作品にしたことがあったので、技法開発の傍、版木を使い捨てることへの抵抗と、再利用の可能性を感じていたのを、北京という新天地で材料や技法を見直す境遇になったところで、少し本格的にやってみようと思ったのです。
本展覧会の「Origin and Surface」というタイトルは、ギャラリーのオーナーであるワン・イン氏が私の作品を見て考案したものです。私の作品を見てワン氏は、“版画とは紙に摺り取られた絵画作品”という単一的な解釈におさるものではなく、版木も版画もそれぞれの素材や技法が、絵画作品の「surface=表面」をバリエーション豊かなものにしていると解釈しました。絵画制作はそれが、油絵でもアクリル画でもコラージュであっても、画面の表情からその表象を立ち上げようとする行為のことに他なりません。
私の作品は、この展覧会をきっかけとして、のちに「版が表現できる画面の表情(テクスチャー)」と「表象」の関係性、さらには「版と画」という版画の構造を分解していくようになります。
ーつづく(2018年8月末、北京の自宅にて)
(以下展覧会で使用されたステイトメント)
2014.12.04
原形与表象
铃木隆太个展
展期:2014.12.6(六)-- 2015.1.3(六)
开幕式:2014.12.6(六) 3-7pm
艺术家现场制作演示:3-3:30pm
策展人:汪颖
地址:北京朝阳区草场地327号颖画廊
此次展出的作品体现了通过木版画、丝网版画和水印版画等综合版画技巧创作的具有多层次视觉效果的版画和木刻作品。日本艺术家铃木隆太在突出自身的文化背景和自我身份认知的创作过程中,以日本浮世绘版画的制作方式为基础,延伸出结合不同的版画制作技巧而产生的综合视觉效果,这些作品突破了我们对版画的传统理解。
“水彩摄影版画”,铃木隆太赋予他的作品一个新颖而独特的名称。做为自身与外界沟通的方式,艺术家以采集图片和摄影的方式捕捉和记录生活,运用不同的版画制作过程在作品题材的“原形”表面加以覆盖多重的“涂层”,目的在于对不同的文化结构,社会环境乃至政治背景做出自己的诠释。这些作品将日常生活中事物的“原形”与“表象”通过不同的版画制作方式表现出截然不同的视觉效果,揭示了生活中事物所具有表面和背后并存的两面性。
Exhibition Date: 2014/12/06 – 2015/01/03
Gallery Opening: Dec 6th, 2014 , 3 – 7pm
Live workshop by artist from 3pm to 3h30pm
Curator: Wang Ying
This exhibition held at Ying Gallery presents a beautiful collection of works combining techniques from woodcuts, silkscreen and water based printmaking in order to illustrate multiple layers of visual effects. Japanese artist Ryuta Suzuki, while giving prominence to his cultural background and self-identity, bases his work on traditional Japanese Ukiyoe printmaking techniques, creating a body of prints with more rounded visual effects successfully exceeds the classic idea and vision towards printmaking.
“Watercolor-based photo-woodcut”, Ryuta Suzuki has given his work an interesting new name. As a way for the artist to communicate with the outside world, he uses a collection of images and photographical methods to capture and document life.Through various printmaking approaches, Suzuki covers the original surface with multiple layers of coating in order to express the “original form” and “surface” of everyday life through different printmaking methods revealing the duality of each subject at the surface level and behind the scene.
Ryuta Suzuki’s artwork is his understanding and interpretation of different cultural structure, social environment and political background. His work emphasizes on the poly-facade of each piece of artwork rather than putting efforts on technicality of making art.