Asymmetry  RYUTA SUZUKI SOLO EXHIBITION

2016/4/24 – 2016/5/31
 at Ying Gallery

 

 この展覧会のタイトル「Asymmetry」とは「不対称」という意味です。asymmetryという単語を展覧会に用いた理由は、版画を「版」と「画」として分解して考えたときに版木と摺り取られた絵の両者における図像反転の対称性・非対称性を展覧会の下層概念に据えたかったからです。
 
 版画の図像反転の対称性とは簡単に言うと、「版」と「画」がハンコの関係になっているということを指します。名前印などを思い浮かべると、文字が正しく押印されるためには、その版となる印には左右が反転した文字が刻印されていなければなりません。それは鏡反転と言い換えてもいいかもしれません。前回の展覧会「Origin and Surface」では、いくつかの作品を版画の「画」と合わせて「版」も絵画作品として提示しました。本展覧会「Asymmetry」では「版」と「画」に版画が分解されることで暴かれる版画の特性を探る試みと、「版」と「画」という対称性を二元論的に捉え直してみようと思ったからです。

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 本展覧会でモチーフとして使用されたイメージは、北京日本人学校の図書室に所蔵されている書籍の挿絵や写真が素材になっています。私は、作品制作の一方で、美術教師として教壇に立つ立場でもあります。ですから、「版」と「画」の二元論に、「教える」と「学ぶ」という身近な二元論をかぶせてみようと思いました。

 図書室にある図鑑や資料集の写真をおもむろに眺めていると、ある視点に気づきました。それは、当たり前のことですが、書籍のアーカイヴも、アーカイヴされた本の内容もとても日本的だったのです。例えば、スポーツのコーナーへ足を運ぶと、日本で人気のあるスポーツ(野球やサッカー)を取り扱う本が多くありますし、昆虫や植物図鑑も日本に生息する種類を中心に取り扱っています。海外の本の邦訳でなければそれは、科学を紹介する雑誌から戦争を取り扱う歴史書まで、その内容がたとえ単一なイデオロギーに染まらないよう気を使って校正されたものであっても、極めて日本人的視点に立っているのです。日本人学校の図書室ですから、日本の書籍をアーカイヴし、それを学習に役立てる目的ははっきりしていますから、そこに疑問を投げかける余地はないのかもしれません。でも私には、現代中国の中心で、日本書籍を目にする違和感がとても新鮮に思えました。

 

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 海外生活をしながら日本のことを考えるのは、例えるならば鏡で自分の姿を見ることに似ています。つまり、日本から離れているために、日本のことが客観視できるのです。理由は言うまでもなく、海外に住むことで、日本の文化や風俗を、住んでいる外国の地域のそれと比較できるからです。多くの場合日本のいいところが、しかし、当然悪いところだって見えてくるものです。私の場合、2016年の時点で、中国に来て4年間という歳月が流れていました。イギリス・ロンドンでの4年間を合わせると海外在住期間は合計8年間。長いのか短いのかは、考え方によって様々ですが、前述のように学校の図書室で目にする日本書籍が新鮮に感じられる感覚を持ち得ました。 

 

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 さて、「教える」と「学ぶ」に話を戻します。いまの中国は貧しい80年代を経て、その後急速な経済発展を遂げました。そこでの原動力が、中国人の「学ぶ」姿勢ではなかったでしょうか。人によっては学ぶではなく粗悪な“コピー”が中国の代名詞になっているかもしれません。それはさておき、この30年間中国は国をあげて他の国の技術を学んできました。日本などはある意味先生として様々な産業技術を提供してきた国です。では、文化面はどうでしょうか。私が中国人の友人と会話している中での感覚では、この20年間、特に若い世代が(中国で「80年後」や「90年後」と呼ばれる世代)日本から文化面を学ぼうという姿勢を示しています。そのように考えると日本と中国は学校の先生と生徒という関係に見えてきそうです。最も日本では久しく対中感情がよくありませんから教えているという感覚は乏しいかもしれません。一方中国側は、私の知る限りとても親日的です。中国国内で生活していると、ニュースや新聞で強調される政治的な摩擦よりも、もっと民間の交流が目に留まります。私の友人たちは、夏に有給を使って日本旅行に行きます。かつて京都や東京が主流だった旅行先も、最近ではフジロックに出かけ、さらに長岡の花火大会にまで足を運んだり、直島周辺のアートスポットを散策したり、私自身が羨ましいと思うような旅行プランを楽しんでいるようです。

 では歴史上ではどうだったのでしょうか。歴史においても日本は中国の先生だったのでしょうか。ふと日本史を思い浮かべると答えは簡単に出てきます。縄文時代、中華から見た日本は遠く片田舎の島国でした。日本の確認できる史実では数千年前からずっと中国史に寄り添う形で形成されています。中国は考えてみれば、日本の大先生だったのではなかったでしょうか。ここで文化史に深く切り込むつもりはありませんが、「教える」と「学ぶ」の二元論だけでもとても面白い視点が広がるものだと思いました。(当然現代の文化論にアメリカとの関係も欠かせません)

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 さらに「学ぶ」でもう一つ。「学ぶ」という語の語源は「真似る」がなまった発音から形成されたという説があります。「真似る」と聞いてコピー&ペーストな時代に生きる私たちはすぐに複製することを思い浮かべるかもしれません。しかし、中国から多大な影響を受けた島国は、中華に吸収されず、“日本”であり続けました。すなわち真似ることはコピーではなく、ギリシャ的にいうならばミメーシス(模倣)であると言えます。つまり、学ぶということはお手本をその通りコピーするものではなく、学ぶものがお手本(イデア)に近づこうとしつつも、独自の変化や進化を加えて行くことではないでしょうか。それは人類の文化論であり、遺伝というスケールで考えるならば進化論とも言える、とても根本的な概念であるような気もします。

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 私の作品はまず版画の「画」を通常の版画制作同様完成させます。その後、「版」と向かい合い「版」をペインティングとして成立するように加工したり、色を塗ったりします。本来、「版」と「画」は鏡反転の関係ですから、(どちらが虚像で、とちらが実像であってもいいのですが)図像としては同価のものです。ですが、手順として「画」の完成後に「版」に立ち戻る工程になるので、「画」の完成から、いや、もっと言えば彫り始めからはかなりのタイムラグが発生していることになります。この時間差が、本来の図像の同価性から差異を生み出します。私の考えるasymmetryの意味はa・symmetryであり、以上のような考えから図像反転の対称性・非対称性を探ってみようという試みでした。

ーつづく(2018年9月初旬、北京の自宅にて)

 

 

(以下展覧会で使用されたステイトメント)

展期: 4月24(周日)-5月31日(周二)
开幕式:4月24日(周日) 下午 3-6点

我们非常高兴的宣布颖画廊新空间落成,新址为草场地艺术区258号。新空间由建筑设计师狄韶华率领的 Praxis d'Architecture 第一实践建筑设计团队设计。他们设计的Spring Art Museum 在2016年1月荣登建筑权威杂志 Dezeen. 我们非常高兴的邀请您来参观我们的新空间,并出席我们的首展 "不对称" --日本年轻艺术家铃木隆太。 
此次展览引用“不对称”为标题,将作品的原版和版画进行分解和重构,并赋予它们独立的表现形式。在上次个展Orignal&Surface (原形和表象)的基础上,深入探索版画在当代艺术中的表现形式。 作为一位来自日本的版画艺术家,铃木隆太完全打破了我们对于版画的固有认识,独特而多样的创作手法是通向艺术家表达创作概念的一条通道。 “在经历了东京,伦敦,北京生活之后,对自我“文化身份“的思考成为了我创作中的核心。在日语里“学习“(Manabu)的语源来自于“模仿”(Maneru)。历史上日本从不同的国家引进了不同的文化,并对它们进行了模仿。“模仿”指的是有意识的对另外一个既存对象进行接近的过程。“复制”所指的是为了最终达到和另外一个实际物体完全相同的结果。在这两者之间的相同和不同产生的“不对称“,出自不同文化在理解上的细微偏差,深入思考这种偏差产生的根源是理解日本文化的重要手段 ,也是我创作思路的由来。 
颖画廊全体成员期待您的光临。

Exhibition duration April 24(Sun) -May 31(Tue) 2016
Opening reception: 24(Sunday) April 3-6pm

We are very delighted to announce the opening of the new space of Ying Gallery at No. 258-2-1, Cao Chang Di Art District. The new gallery space is designed by PRAXiS d'ARCHITECTURE led by architect Di Shaohua. Their design project Spring Art Museum was published in the authoritative architecture magazine Dezeen (January, 2016). We cordially invite you to visit our new space and attend the opening exhibition of "Asymmetry" by Japanese artist Ryuta Suzuki. 
Taking "Asymmetry" as the title, this exhibition has deconstructed and reconstructed the original pieces and the prints, and given them independent form of expression. On the basis of his last solo exhibition "Original & Surface", the artist goes on exploring the form of expression of prints in the context of contemporary art. As a printmaking artist from Japan,Ryuta Suzuki completely breaks our stereotypical recognition of prints, with his unique and diversified creative methods as a way to express his artistic concept. 
"Having experienced the life in Tokyo, London and Beijing, the reflection on my 'cultural identity' has become the core of my creation. In Japanese, the word 'Manabu' (learn) is derived from 'Maneru' (Imitate). In the history, various cultures have been introduced into Japan and been imitated. 'Mimesis' refers to the process of consciously approaching to another existed object. 'Copy' refers to the attempt to getting the exactly same result of another object. The 'asymmetry' generated from these sameness and difference is the result of the cognitive nuance in different cultures. Delving into the origin of such nuance is an important way to understanding Japanese culture, and is also the inspiration of my art creation."
Opening reception: 3:00 - 6:00 pm, April 24(Sunday) 2016